元々、整形外科の看護師として働いてきた森川さん。この就労継続支援B型事業所「きらめき」をスタートするにあたって抱いていた想いはなんだったのだろうか。 

―直球な質問ではありますが、このお仕事で大事にしていることってどんなことですか? 

大事にしていることですかぁ。なんだろう。一番は、『自尊感情』ですね。人って、必要とされたいじゃないですか。それが人生のうえで障害があったりで、そういう心持を持てなくなってしまっている方って多いんだと思います。ただ、これがあれば割とこの先の人生でも乗り切れるんじゃないかと。 

でも、ここに来てくれている人たちは、皆さんとにかくやる気マンマンなんですよ!午前中だけの作業のはずが、フルタイムでやっちゃうとか。出来ないことにも果敢にチャレンジしようとしたりとか。 

―じゃあ、もうあるんじゃないですか?(笑) 

そうなんです(笑)だから、看護士だった私と、常勤してくれている介護福祉士主任と、職員のみんなで知恵を絞って、皆さんの挑戦をサポートしているって感じですかね。そうやって「この人ができる事なんやろ~」ってやっていると、心の交流を通して「誰かの何かの役に立ちたい」って心が芽生えてきてくれるみたいです。 

―すごいじゃないですか! 

私たちも一緒に作業をしますし、仕事もたくさん頂いているので、手一杯ではあるのですが、やる気がある分、指示したことだけじゃなくて、自分で工夫しだす方も多いんですよ。例えば、封筒数えるのもやっとで、その数も間違えてしまったりするので、ずっと横についてチェックしないといけない方がいるのですが、いつの間にか複雑なレターセットの組み作業までできるようになったりとか。私も「丁寧にキレイにすれば、時間が味方するよ!」と伝えてキレイに揃えて置くことを伝えていてはいたのですが、自分で道具とかも工夫して、よりキレイな組みあがり状態で次の作業をする人にパスをするとか、相手の気持ちやリズムを考えてくれるようになったりとか、進化が止まらないんですよね! 

―とはいっても、スタッフの心の余裕がないとなかなかできないのではないですか? 

うちのスタッフはそのへん度量があるというか、許容範囲が大きな人間ばかりなので、私と一緒に、利用者さんが工夫されている姿を面白がって見ていますね。だから私たちも、認めてあげるとかっていう感じではなくて、変化・進化していく姿が面白い!って感じで、一緒にそこにノッていくという感じです。それが勝手にリハビリだったり機能向上になっていくんですよね。でも、こういうのが「生きることが楽しい」ってことだと思いますし、「きらめき」ってことだと思うんです。 

―素敵な話ですね! 

でも、皆さんの意欲&アイデアがどんどんわいてくるので、サポートを追いつかすのが大変ですけどね(笑) 

―でも、障害をお持ちの利用者様もいると聞いています。そういう方って、なかなか出来ないことも多いと思うのですが、どうやってそこまでもっていっているのですか? 

そりゃあやりたくても、障害があるから出来ないことってあるんですよね。でも、やりたいし、役に立ちたいという気持ちが本人にはあるんですよね。それを「可哀そうや」って受け止めるのではなくて、私たちも一緒に作業、プレーしている訳だから、「ここまでにこれを仕上げておいてくれたら、下ごしらえしておいてくれたら、次の人の作業スタートが早くなるし、作業進むから頼んだよ!」って、「そこのプロになってちょうだい!」って、お願いしてるんですよ。そしたら、誇り持ってやってくれるし、それが自信にも繋がったりするんです。 

―なるほど、そうやって言われたら嬉しいし、俄然やる気にもなりますよね。 

出来ないことがあって、やることに制限がかかってしまって、「あれもしたいけど、私はこれしかできないから・・・」っていう人生よりも、「出来ない分、こっちで頑張るわ!」っていう人生の方がいいじゃないですか。せっかくうちに来てくれたんだから、そういう風な人生にしてほしいなと思っているんです。 

―利用者さんと一緒に目標に向かっている感じですね。 

なかなか生活リズムを崩してしまったりしている方もいたりして、うまく出て来れない時もあるんだけど、仕事を外部から請け負っている身なので「来てくれることが助かる」って思いながら作業しています。そういう意味では、利用者さんそれぞれ、自分の体力だったり精神力の限界がありますから、そこを無理ないようにして、自分のリズムや働き方のパターンを見つけてほしいなと思っています。だから、職員さんと一緒に「生活リズムアドバイザー」っていう資格も取ったんですよ。けっこう難しかったんですが、職員さんも「安心してもらいたい」気持ちが強くて、積極的に研修も受けてくれるので、いいサポート体制が出来ているな、いい人たちに囲まれてありがたいなと思って毎日過ごしています。 

―なんだか『温かく見守る母』ですね(笑)ただ、お話を聞いている以上に、なかなか大変な仕事だと思います。なぜそんな風に思えるのですか? 

まずは、自分の子育ての体験ですね。今、二人の男の子を育てているのですが、性格の違いがありすぎて(笑)「人ってみんなちゃうねんなぁ~」としみじみ感じているからです。 

もうひとつは、昔働いていた会社の社長が何かあるたびに 

「千人の上に立つ人は、千人の下に心をおかなければならない」 

「汗は自分でかきましょう。手柄は人に渡しましょう」 

こうやって教えてもらって、それが今もずっと心に残っているんですよね。 

あとは、障害を持つ方へのリスペクトです。輪廻転生って言葉だったり、人生は魂の修行って言葉がありますが、障害を持つ方は、いっぺん普通の人間の修行をクリアされた方なんじゃないかなって考えているんですよね。人間って「人の間」っていう意味らしいのですが、障害を持つ方って、ハンデがあっても人生をきらめけれるかどうかという修行をしに、この人間(じんかん)を与えられた人生の先輩だと思っているんです。そういう風に捉えていると、利用者さんの取り組みは、私にとって学びになるんです。そこでヒントをもらった自分の気づきをもとに、ここに集うみんなで一緒に「きらめき」ある人生にしていけたらなぁと思っています。 

代表 森川睦美